2025年12月10日

眠りを誘う子猫の歌声

 優しさにふれたとき、皮膚の細胞ひとつひとつがざわめき、花が一瞬にして咲き誇るよう、世界に灯りが灯る。

疲れた体を電柱に預け、暗闇の中1人、帽子を目深に被った。

昨日から続く身体の不調は波を超え、またいつものよう何もなかったと元に戻る。

足元の砂を踏み出した。


希望は光の細胞だ。

夜に希望を抱くのは私の造りが間違っているからか。


停滞し始めた生活に刺激をと、

毒を飲み、堕落を求め、衰弱する。はたまた、

心体に鞭を入れ、滝に打たれるか。

今、選択を目の前にしている。


もう新年が見える。

なんだか向こう側が明るく見える。

新緑と秋風の匂いがする。

鼓動が喜ぶメトロノームが鳴っている。

私はそっと、

期待に蓋をした。

その方が上手くいくからだ。




2025年12月9日

小綺麗なウォルマー

過ちを繰り返す。
過ちのない人はいない。
私は特に、
過ちを繰り返す。

過ち。
手の届かない箇所に穴が空いて水漏れを防げない。
見て見ぬ振りをして次へ流れる。

日中は当たり前のよう、陽の光が町中を照らし活力を配っている。全身を削るような寒さがそれを濁している。
同じことを繰り返す。
同じことを繰り返している気になる。
同じ生き方を過去にしたことがあるような気にさせる。
たった4種しかない季節が繰り返すことの奇跡さを物語っている。

何かをしたい。それも欲。
何もしたくない。それも欲。
欲が支配しその正体を掴めずにいる。
欲は大気に紛れ、私の中に入ってくる。
欲により人を傷つけ傷つけられ。
宇宙の広がりみたい、欲中毒が舵をきる。


鶏肉と煮た大根が太く切り過ぎたようで火の通りが甘い。側だけ齧ると愛情に似た優しい甘みが欲を満たした。



2025年12月7日

出涸らし

 内側に答えを探し、何もないことに絶望し、外側に答えを探し路頭に迷う。

私の青春を表すとこうなる。

今後、様々な体の不調が治り、取り戻せない時間を憂い、焼けた野原が復活し緑の上に立つカカシのよう。

誰を責めるわけでもなく、確実に近づく死への道のりを歩んでいく。


私が常日頃言う、あの感覚。

「煙」みたいな、おそらく大事であろう何かが今日久しぶりに私の周りにふらついた。

「香り」であったり「匂い」であったりするが、

今日は捕まえることができなかった。

確かにあれは私の心に流れた星屑の一片だった。

老いるとはこう言うことだ。

捕まえられない ことをいうのか。


冬が席捲し、一日の半分が暗闇に隠れた。

ひとつ雪が降りると冷たいはずなのに暖かかった。

私には。まだやることがあるのか。

体の内側のどこか、隙間風と共に「良い」光が漏れていた。





2025年12月6日

帷に潜む何か

 体に触れた途端、傷の雨が降り出した。

自己を回復しようと胸に手を当てた。

すると、鳥の足跡のやうな傷が次々に産まれ蝕んだ。


一度錆びた肉体、壊れた心。

それでも時間は過ぎていく。

藁人形のよう、一日を無駄に過ごし、無駄に生きる。


鼻水も涙も汗も。私は、生きている。


2025年11月6日

ふてね

 少し荒い息づかい。

後退りのない関係。

手に取るとわかる滲む汗。

今までのいくつかを備えた全て。

飽くる日も離さなかったあの手。

答えのない将来。

分かりきった答え。

視界を揺らす結晶。

あなたを彩る全て。


懈怠な態度。

しつこい勧誘。

話せなかった秘密。

踏み滲んだ桜。

降り頻る雨。

ろくでもない貴方。


噛んだ爪。

剥がれた皮膚。

真っ赤な目。

滲む汗。

光る鮮血。

不揃いな僕。


汚れたテーブル。

眩しすぎる太陽。

取り戻せない時間。

解かれた呪縛。

律儀なあなた。


焦る人達。

波のような人混み。

無関心な優しさ。

座れない座席。

無機質な社会。

足掻く私。


吐露された現実。

隠された気持ち。

打ち込まれた楔。

意味を持たない夢や希望。

お前の後ろ姿。


力んだ表情。

垣間見る笑顔。

抱きしめた体。

逃したくない束縛。

蝶のようなヒト。


思い出せない記憶。

立ち止まる勇気。

いない神々。

猜疑心の塊。

わたし。