2023年12月30日

レコードは飾らない

日常を溶かすごとに汗を流すのは、死へ急ぐ愚かなヒトの話。

独りを願い誰もいない方向に歩き出したのは事実だが

悲しみという物質がこの空間を埋め尽くしているとは。

体験してわかることにしては身体にダメージがすぎる。

何もわかっていなかったあの頃、何もかも分かりきっていたあの頃、環境という風が自由気ままに私を運び好き勝手に流れては私を沼地に運んでいく。

無意識という足枷だけが意識を明確化する。

見知らぬ電灯が人知らず消え、あの教室のカーテンはひとりでに舞い踊る。

きっと詰まっているだろうに、記憶の砂を一つの瓶に収めては微生物一つ生きてはいないあの海へ流す。

これは海洋散骨、確かに在る意味を、誰もいない海に。

2023年8月27日

広大な地に、1人のかたまり

皮膚を一つ剥がすとそれは、私を彩った欠片に過ぎなかった。

体毛一つに記憶が宿り、知らないうちに風に乗った。

憂ういとまを与えないように神様が上手に設計したらしい。

そうでもしないと私たちは悲しみの淵に追いやられるのか。


2023年8月26日

ほどかれた心臓

 棺桶に入ったか、または隧道にとじ込められたカエルのように心身が閉塞していく。

疑心暗鬼から生まれたカエルは猜疑心を撒き散らし1秒1秒に怒りを表す。

余裕などない。

有限の中、終わりを見ることのない稚拙な脳みそは

いつの間にかの夕日達に不意をつかれる。

子供達は、まだ、白しか知らない目とこれから先も黒しか知らない純粋な目で私を治療してくれる。

動かなくても変わりゆく日常は、私という難破船を前に波のように流れ、救難信号の教えを受けない男はただ優しく舵に触れていた。


2023年8月14日

左半身麻痺

 触発されて交感神経が踊り出すと耳鳴りが振動を落ち着かせた。

すると、

ばかすかと暴れる換気扇が私は騒音ではないのですよと破茶滅茶な理論を展開し気が済むまで回り続ける。

この部屋がN極のせいで私はS極になってしまい身軽な砂鉄の様に吸い寄せられた。

外は次第に暗い。

夏の日がまだ眠りの頃、雨は容赦なく降り注ぎ至極のクラッシックを奏でている。

円に囲まれた私たちは分かっていながら同じことを繰り返し体力を溶かしている。

俯瞰で自分を探しては神の視点で描かれる毎日に、

当然だと言わんばかりの情けなさに勝手に呆れる。


2023年7月5日

伝えた逸話は夢に溢れる

 鼻の奥から脳天、脳裏に向かって管一杯の液体が流れ込む。

頭の奥底、暗い部屋からエレクトーンが鳴り響き、

まばらな記憶を断片的に集め出す。


「あなたは何で出来ているかと申しますと、

ひと、ひと、ひとでございます。

あなたの中には数えきれない人の陰が渦巻き、

男の人、女の人、男な人、女な人、多種多様な人種が入り混ざっているのでございます。

あなたは、あなた一人のものではございません。

あなたを形作るのに無数のひとたちが必要なのです。

なので、なのであなたは自分を傷付けてはならないのです。

あなたはあなただけのものではないからです。

あなた自身があなたを愛することは同時にそれは、

あなたが他人に愛を注ぐことなのです。」


2023年7月1日

音が鳴り止む時、ひだまりを見つける時

夕方のライブ映像が、 胸の奥にある非常に重たい石を動かして、

心臓に布を被せたように、焦りに似た刺激が生まれた。

嫌とならない不思議に、少しだけ時間を注いでみる。


自分一人の空間では全く持って感じられない現実、それが画面越しに伝わることで体の中に変化が起こる。

やがて変化は蒸発し、くすみやひずみみたいなものをほんのちょっと削っていく。

リフレッシュには程遠く、漢方みたいに効きにくい。

でも、それに好意を寄せる。

他方面からみると安心感もあり、鼓動が奥底に沈む。

心拍数がつかみきれないほど深く潜ることで、やっと理性が機能しだした。

理性は無心で無表情に悩みを解決し、焦りと不安を浄化する。

こめかみに羽虫がイタズラし無造作にかき散らすと、

「自分にしかないんだよ現実は」と小さな羽は理解を与えた。



2023年6月25日

単細胞に跳ねる子供たち

靴紐がほどけたまま、小さな足の裏を外の世界にささげると、風や緑の木々が歓迎する。

今日も1日が始まる。

下を向きながら歩きその視界は限りなく狭い。

「落ちてるお金が見つかるな」

声が聞こえ、耳を澄ます。すると、

緑の蛍光色がきらびやかな羽虫が目にとまる。

負けじとささくれを剥げばルビーの鮮血が自己を肯定する。

すさみすぎてる体内からは理解しがたいくらい綺麗なプレゼントだ。

生きていこうと思える理由の一つ。



2023年6月24日

工事現場に日傘の雨

 何百、何千と同じ道を通る。

気分はまさに重ねた書物の一番下。

ふと立ち止まり、ひだまりが留まると同時に音が止み

逃げ場のない世界が完成する。

その世界で私は非常に弱く文字通り何もできない。

また後ろが急かすから助かった。

時は変わり雨降る中、窓ガラスに伝う雨粒が合流して共に流れ、流れ星の様に留まることを知らない。

意思を持つ雨粒はこれは嫌と言わんばかりにそれぞれパートナーを見つける。

本来あるべき姿だと神秘性が問いかける。

綺麗に輝くから目にとまり見続ける。



ニスのような植物に思い出を

 どれだけ深いか判断つかない水の中。

その上澄みで潜っては息を継ぎ、

また潜っては息を継ぎ。

思い切り潜ることをせず、また水から解放することもない。

ぼやけている全部が「そのまま」とみつめる。

激しく上下しない私は、振り幅を恐れる私はきっと

「そのまま」



2023年6月22日

頬骨の高い丘に

 あらゆる方向から吹く風の様に、確かに大事なものが半透明のままその存在を知らせにくる。

そいつはきっと無形のダイヤで掴むことは決してできない。

愛とか心とかそんな単調なものじゃなく、また広く人々に知れ渡らない。

自分だけにしか訪れないそれは、必死に血眼に1ミリでも触れていたいものなのだ。

瞬きの速さで過ぎる1日の中、割かしゆったりとやってくるせいで、その大事さに気づかない。


例えばそれは季節の香りのようなもの。

教室の窓を開けた時、ホコリの匂いのカーテンと合わさる冬の匂いや、

朝、ご機嫌な太陽にすり寄るときに纏わりつく春の匂い。

これは他人に伝わる言い方で、

私自身、本音で言うと、

階段の曲がり角、過去に何度も嗅いだ腐ったドッグフードのような香り。

幼い頃遊んだ子にした漢方薬のような香り。

香りだけじゃなくそれはシチュエーションでもある。

デジャブだと片付けられないもので思い出のように確かなものでもない。

ただ死んだあと次の世界に引き継いでみたい唯一のものなのだ。