2024年2月15日

廃れた喜び

 歳を重ねるごとに年月はスピードを上げ、まるで雪が溶ければ春が来て梅雨が終われば夏が来る。感傷に浸る暇もないよう、滑り落ちるように歳をとる。

大事なことは今この瞬間、私を構成するそれら全てがシンプルに出来上がった訳じゃなく、何億もの場面で埋め尽くされた混沌の魂ということ。

後何回、土曜日は来るだろう、後何回日曜日が来るだろう。

限られた生き方に目を瞑り、進化を願う実証的な今日この頃。 光を証明するように暗がりに隠れ潜んで1日を耐え忍ぶ。

心臓は付随的に機能して、心を叩くその音に嫌気がさすその日まで。

2024年2月14日

鉄屑の隣

 取り返しのつかない事をしている。そんな気分に溺れて苦しい悲しいもどかしい。

過去を彩った一つ一つの出来事は2月の桜に流される。

これからは一歩一歩踏みしめて進まないと地獄にさえ向かえない。


体の一つが再生すれば、また別箇所が剥がれてく。

きっと気持ちもそうだろう。

雑に剥がれた心の壁面は次第に癒え、また別箇所が剥がれてく。

時たまに、愛とか光が瞬間瞬間で私を治療する。

陽だまりに寝そべり2月の空、冷たい空気にさらされた明確な星達のその先、いいも悪いもないただの暗闇に助けを求め今日も過ぎて。

2024年2月13日

告白とカラス

 誰しもが忘れ去っていくもの、せわしい街の騒音や間を埋める談笑にかき消されている優しい雨。

目に見えない光の線が後になって、数年経って夜にふと映像になる。

風や霧、景色や匂い、それら全ては思い出の額縁を彩りきちんとした場所に飾られる。

不都合なものに蓋をして、タイミングを読み、場が乱れるのをいち早く察知する私は、何て優しい。

なんて優しい人。

肉体をミキサーにかけ、最後まで回したなら、液化しないでぶつぶつの、砕けた発泡スチロールの分子達が人の正体だとわかる。

一つ一つの粒に過去が宿り、それらが集まり肉体となる。

その内のたった一粒に、あなたの一粒になっているでしょうか私は。


2024年2月10日

冬の途中

 腹は減り、眠くなる。

欲を無視してもなお身体は生を求める。

幻になりつつある冬が、現実的な寒さを運び、

耐え忍ぶ夜も来る。

壁のスイッチを切ると同時に朝が来て、1日の消化に向かう。

町行く人は私に無縁で、そっけない。

その度木枯らしが私の気を逸らす。

心地の良い物質だけでこの空間を埋め尽くせたら、

天国さえも必要ない。

いつからか、周りを捨て自分を捨て、後悔を通り、諦めが広がり出すとこの世界は一体どこへ向かうのか。



2024年2月8日

ジャズ

 曖昧で空気のような世界に一人、たった一人でいるような。人と呼べるような気配はなく、スノーノイズだけが音を与える。

スタミナを知らない昆虫を尊敬し、今日もまた知らない何かに眠らされる。

この生活にゼンマイを巻いている存在があるとしたら、指先の力が弱った痴呆老人か。

無気力という便利な言葉じゃなく、複雑な糸の絡まりで動けないだけと信じてやまない愚かな獲物。

後は社会や集団に駆られるだけなのに一つの焦りも見せない私に、一体何が誰が手を差し伸べるだろうか。