2023年6月25日

単細胞に跳ねる子供たち

靴紐がほどけたまま、小さな足の裏を外の世界にささげると、風や緑の木々が歓迎する。

今日も1日が始まる。

下を向きながら歩きその視界は限りなく狭い。

「落ちてるお金が見つかるな」

声が聞こえ、耳を澄ます。すると、

緑の蛍光色がきらびやかな羽虫が目にとまる。

負けじとささくれを剥げばルビーの鮮血が自己を肯定する。

すさみすぎてる体内からは理解しがたいくらい綺麗なプレゼントだ。

生きていこうと思える理由の一つ。



2023年6月24日

工事現場に日傘の雨

 何百、何千と同じ道を通る。

気分はまさに重ねた書物の一番下。

ふと立ち止まり、ひだまりが留まると同時に音が止み

逃げ場のない世界が完成する。

その世界で私は非常に弱く文字通り何もできない。

また後ろが急かすから助かった。

時は変わり雨降る中、窓ガラスに伝う雨粒が合流して共に流れ、流れ星の様に留まることを知らない。

意思を持つ雨粒はこれは嫌と言わんばかりにそれぞれパートナーを見つける。

本来あるべき姿だと神秘性が問いかける。

綺麗に輝くから目にとまり見続ける。



ニスのような植物に思い出を

 どれだけ深いか判断つかない水の中。

その上澄みで潜っては息を継ぎ、

また潜っては息を継ぎ。

思い切り潜ることをせず、また水から解放することもない。

ぼやけている全部が「そのまま」とみつめる。

激しく上下しない私は、振り幅を恐れる私はきっと

「そのまま」



2023年6月22日

頬骨の高い丘に

 あらゆる方向から吹く風の様に、確かに大事なものが半透明のままその存在を知らせにくる。

そいつはきっと無形のダイヤで掴むことは決してできない。

愛とか心とかそんな単調なものじゃなく、また広く人々に知れ渡らない。

自分だけにしか訪れないそれは、必死に血眼に1ミリでも触れていたいものなのだ。

瞬きの速さで過ぎる1日の中、割かしゆったりとやってくるせいで、その大事さに気づかない。


例えばそれは季節の香りのようなもの。

教室の窓を開けた時、ホコリの匂いのカーテンと合わさる冬の匂いや、

朝、ご機嫌な太陽にすり寄るときに纏わりつく春の匂い。

これは他人に伝わる言い方で、

私自身、本音で言うと、

階段の曲がり角、過去に何度も嗅いだ腐ったドッグフードのような香り。

幼い頃遊んだ子にした漢方薬のような香り。

香りだけじゃなくそれはシチュエーションでもある。

デジャブだと片付けられないもので思い出のように確かなものでもない。

ただ死んだあと次の世界に引き継いでみたい唯一のものなのだ。