荒波の音が豪雨のように聞こえ、酷い孤独に苛まれる。
眠れない身体を無理やりと、瞼を閉じて終わらせる。
夜がせっせと朝に向け、黒い纏をこすり落とす。
若さとは、また明日、目覚めることに無関心なことだ。
周りの人間が魔法のように歳をとり、現実感など毛頭ない。
私だけが1人、海辺の宿に取り残される。
嬉しい、雨が降る、子供達は傘を放り笑顔になる。
私とて両手を広げ顔を上げ、ずぶ濡れになる。
予報にない突然の雨に街行く人々は落胆する。
オシャレに決めたスタイルもびしょ濡れ台無し。
みっともない。
雨よりスコール、激しい嵐は酷く激しく地を打ち叩く。
突然の雨は、私にとってのサプライズ。
もう見えないくらい遠いところに現実があり、
訳のわからない遥か彼方の空間からそれを見ている。
つまり、もう救済はなくてあとは身を委ねるだけ。
外部からの強烈な接触はなく、宇宙のように膨張し、
次第に現実は見えなくなるだろう。
それでも哀れだと蔑む声もなく、霧のような視界は景色を変えない。
道筋がないのと、行先が分からないので、考えるだけ無駄なのは百も承知と瞑想みたいに頭を休ます。
玄関、キラリと光る革靴を履き、外に出る。
夏の終わりが匂いを残し、秋の後ろにバトンを渡す。
エアコンの室外機は役目を終えた老人のように息をやめ、郷愁な秋風が電線を揺らした。
酷暑など平然と乗り越えたかのように野良猫たちが姿を見せ
これからくる厳しい季節に睨みを効かせ、細い体でうねうね歩く。
雨は降らない、なのにキラキラしてる、秋はまるで古い宝石箱を見るようだ。
嬉しくなり、
意識しないと一生立ち止まらない場所に立ち、視線を斜め右上に向ける。
目に見えない大事なものがどこかどこかと流されていく。
私を必要としてる存在がいて、私は生きている と
砂糖は甘い みたいなことを言ってみる。